数を恃む [フィクション]
「よ~、ひさしぶり~」
「どうもです~」
「いやぁ、女性ばっかりなんですよ」
「へぇ、よかったじゃん。もてもてで。前の会社は女性はそんないなかったわけだし」
「そんな気楽なもんじゃないですよ」
「へぇ」
「もうねぇ。見られてるんじゃないかって、気になってしょうがないんですよ。トイレに行くのも気ぃ使うんで」
「は?お前、前の会社で女性がトイレ行くの、いちいち気にしてたの?」
「しませんよ!」
「だろ?なら、気にしないよ。お前、どうしちゃったの?」
「別に。ただ、自分が思い上がってたって、嫌ほど思い知らされたんですよ」
「前の会社で、自分がフェミニスト気取りだったんですよ。職場の女性とか、一人で男の中で心細いだろうから、気を使ってあげようとか思ってて」
「やさしーじゃん。何が問題なの?」
「逆の立場になってわかったんですよ。いかに自分が、多勢を恃んでいたかって。フェミニスト気取られた女性が微妙な顔していた意味がやっとわかりましたよ。数の力に頼っている人間が何を言うかって」
「はあ・・・」
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