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「そこまで嫌なんだったら、とっとと切ればよかったんだ」 [フィクション]

「おー」
「おう」
「お前、辞めるんだって?」
「ああ」

「そうか・・・。いや、意外だったよ。最初に辞めるのがお前とはね。お前のところの上司は確かに色々ある人だけど、でも、他の連中の方がぐちぐち言ってたじゃん」
「・・・ああ。まともに言うこと聞いてたのも俺ぐらいだがな」
「うん。だから辞めるとしても最後まで残るぐらいに思ってたんだけど」
「・・・やってらんなくなったんだよ」
「うん?」

「正直、理不尽だったんだぜ?それやったって大して誰も喜ばないような仕事だの、他人が面白くないからって放り出した仕事の後始末だの、そんな仕事ばっかりで。それでも、チームとしての必要性だとか、組織戦略だとか、序列とか、そんなもんもあるから、しょうがないって真面目にやってたさ。細かなミスだの揚げ足取りも、真面目に従ってたさ。他の連中には突っ込まないってのに」
「・・・不公平、だわな」
「ぶっちゃけ、チームのタスクのうち、まともにやってたのは俺の担当のもんだけだぜ?それも、重要性は大して高くない。っつーか、露骨に、いい仕事は他の連中行きだ。こっちがやっていいところまで行くようになったら取り上げられ、他の連中に担当替えだ。
まあ、それでも我慢してたけどな。他の連中がその仕事おっぽり出して、俺のやったこと全部無駄にしてもな」
「・・・おう」

「それでもさ、仕方無いって言い聞かせてたさ。下っ端なんざ、上の踏み台ってもんだ。
だけどな。目の前で、他の連中が指示されたことを"やってません"と堂々と宣言して笑って許してんのを、毎日毎日見せつけられるんだぜ?
こちとら、言うこと聞いて、必死に仕事して、その挙句揚げ足取りだの皮肉だのにまで耐えてるっつのに。他の連中や他の部門からは、融通聞かないだの散々悪評立てられて。それもこれも、俺に他人の仕事に手を出すのを徹底して禁止してからだっつのに。俺だって、やれるもんなら、もっと他人の役に立ちたかったよ!人に喜んでもらいたくて、この仕事についたってのに!」
「・・・それでか」
「指示に従わない方が得で、従う方が馬鹿を見るなんて状況、やってられるか?!指示を出す人間が、自分で"自分の指示に意味がない"って宣言しているも同じだぜ!!」
「・・・・・おう」

「ぶっちゃけ、飼い殺しだよ。やらせることもないから無理やり仕事作ってやらして、でも成果だされても要らないから如何に仕事させないかに頭使って、その結果チームとして何のアウトプットも出してなくても構わない。
そこまで嫌なんだったら、とっとと首切ればよかったんだ!!!」

「・・・だから辞めんのか」
「おう。あっちが要らないってんだから、こっちから辞めてやるよ。口先で困った困った言ってるが、根っこのところじゃ、大喜びだぜ。追っ払いたくて仕方なかったわけだからな」
「・・・後はどうなるんだろな」
「こっちの知ったこっちゃない。元々チームとして成り立ってなかったんだ。遅かれ早かれ潰れるだろうよ」

「・・・元気でな」
「おう。ここより酷い所なんてそうそうない。・・・と思いたいところだがな」
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